平成18年5月12日、奈良国立博物館で開催中の本展へ行ってきました。
国宝法華経巻第8 (運慶願経)は、運慶発願の法華経である。焼け落ちた大仏殿の残木を軸木に使っている。礼拝を5万回したという。兵庫県の個人所蔵である。
国宝重源上人坐像は、2度目の対面である(1度目は、久田巻三の世界ー関西ー国宝重源上人座像開帳&奈良柳生笠置を参照)。ふだんは東大寺の俊乗堂に安置されていて、毎年7月5日のみ開帳される。老僧の気迫が感じられる傑作だ。
国宝法然上人絵伝第45巻は、臨終の場面を描いている。左辺上方の紫雲より上人の体に向かって光線が伸びており、極楽往生したことを示している。京都・知恩院蔵で、全部で48巻ある。
重要文化財南無阿弥陀仏作善集は、南無阿弥陀仏と自称した重源が、自分のやった事業を連綿と書き連ねたものである。備前国の年貢決算書の裏に書かれている。東京大学史料編纂所の所蔵である。
重要文化財銅梵鐘は、高野山にも近い和歌山県泉福寺のものだ。「入唐三度聖人」の文字がはっきり読み取れる。重源が本当に3度も中国に行ったかどうかは怪しい。たぶん1度しか行ってないだろう。天台山、阿育王山、四明山の三大霊場を参詣したので、そう言っているのかもしれない。この辺の図太さが、重源の真骨頂である。
自然木杖は、黒光りしている。重源は、この杖を持って全国を行脚したのだろうか。
重要文化財鉦鼓は、首から提げて使うものだ。木槌で打ち鳴らしながら、念仏を唱え、勧進をした。
重要文化財蓮実形柄杓は、長さは30cmほどで、口の口径も10cmほどと小さい。主に銭を入れてもらう柄杓なのだろう。喜捨は、直接手で受けるのではなく、この柄杓を使った。江戸時代に大仏を再建した公慶上人もこれを用いたという。ずっと大切に東大寺に保管されていたのだ。
国宝源頼朝書状(東大寺文書)は、頼朝から重源への返事である。とても大きな字で書かれている。なお、東大寺文書は、1万通近い文書が一括して国宝に指定されている。
国宝源頼朝御教書(大江広元奉書)(東大寺文書)は、伊賀国鞆田庄が東大寺の領地であることを認めた書状である。
国宝法然上人絵伝第30巻は、多くの僧侶が大仏殿の軒下で、上人の講説を聴いている図だ。京都・知恩院所蔵である。
国宝僧形八幡神坐像は、重源が快慶につくらせたものだ。鮮やかな色彩が残っている。神様というより、一人の生身の人間のようだ。奈良・東大寺の所蔵で、毎年10月5日のみ開帳される。。
国宝金剛力士像納入品は、如来や菩薩の頭部のミニチュアが出展されていた。奈良・東大寺所蔵である。
国宝法華堂礼堂棟札(法華堂付属)は、附けたりである。細長い板に文字が書かれている。奈良・東大寺所蔵である。
国宝鉄宝塔はデカイ。高さ約3mある。上すぼまりの円筒形をしている。山口・阿弥陀寺所蔵である。
国宝水晶三角五輪塔は、鉄宝塔に収められていたもので、水晶としては破格の大きさである。三層目が三角形の正四面体になっているのが、重源独特の意匠である。
重要文化財鉄鎚印は、周防国の山で切り出した用材に「東大寺」の焼き印を押すのに使ったものである。山口・阿弥陀寺所蔵である。
重要文化財五劫思惟阿弥陀如来坐像は、五劫院で以前拝観したことがある(久田巻三の世界ー中部北陸ー五劫院・室生寺・新大仏寺)。その時は暗くてはっきり見えなかったが、今間近に見ると異形である。21億6千万年も考え続けたため、髪の毛が渦巻きのように巻いた巨大なアフロヘアになってしまったのである。
国宝文殊菩薩像と国宝普賢菩薩像は、京都・清涼寺の釈迦如来立像納入品だが、紙に描いてあるので、虫食いがひどい。
国宝法然上人絵伝第6巻は、法然たち僧侶が、浄土五祖図を礼拝している図である。京都・知恩院所蔵である。
本展は、5月28日までの開催です。
なお、平常展でも多くの国宝が見られたので、紹介します。
木心乾漆光背は、奈良県の聖林寺の国宝十一面観音立像の光背である。植物の茎をモチーフにしている。
木心乾漆薬師如来立像はデカイ。像高336.5cmある。本来、唐招提寺の金堂の本尊なのだが、今金堂は大改修中なので、ここにあるのだ。薬壺を持ってないのは、平安初期の薬師の特徴である。
脱活乾漆十大弟子立像のうち舎利弗立像は若い。目ケン連立像は老僧である。緊那羅立像は目が3つあり、角がはえている。阿修羅像に雰囲気が似ている。興福寺の所蔵である。
木造薬師如来立像は、平安初期の檜の一木造りの典型的作例である。インド風の顔立ちをしている。奈良・元興寺の所蔵である。
木造薬師如来坐像は、像高50cmと少し小ぶりだ。これもインド風の顔立ちをしている。奈良国立博物館の所蔵である。
木造伝行賀坐像は、法相六祖像の一つである。たれ目の老僧といった感じだ。興福寺の所蔵である。
銅造誕生仏立像及び灌仏盤は、釈迦の誕生を祝う法会に用いられる。童子は、右手は天を、左手は地を指している。ふくよかな顔が印象的だ。東大寺の所蔵である。
銅造法華説相図は、塔や仏を鋳出した銅板で、見た目は真っ黒である。長谷寺の所蔵である。
木造八幡三神坐像は、僧形八幡神像、神功皇后、中津姫の3躯である。中津姫が一番色が残っている。薬師寺の所蔵である。
木心乾漆伝義淵僧正坐像は、岡寺の基を築いた義淵の像である。老僧で、目がギラリとしている。奈良・岡寺の所蔵である。
本展は、7月9日までの開催です。
以上、4時間半も1つの博物館にいたのだが、膝が痛くなってまいりました。よく頑張りました。