中国国宝展

 平成12年11月11日(土)、中国国宝展と記念講演会を覗いてきました。

 東京国立博物館の西岡次長による講演は、スライドによる各展示品のポイントが大変分かりやすいものでした。中国文物の展覧会は、過去日本で数十回催されてきましたが、質的には今回のものがずば抜けているということでした。

 講演会の後、さっそく展覧会場に入ると、いきなり青州の「東方ビーナス」が迎えてくれる。山東省青州龍興寺で出土した菩薩立像であり、今回の超目玉だ。もちろん日本初公開である。

 うっすらとした笑みを浮かべ、穏やかで、またちょっと冷めた感じもあって、なんとも言えない雰囲気を醸し出している。首の下の胸上部には、金の装飾が緩やかな曲線を描いている。また、肩の辺りにも赤い顔料が残存していて、制作当初はまばゆい輝きを誇っていたのだろう。

 法隆寺の百済観音を思い起こさせるのは、顔の表情もさることながら、体の前後のくねらせ方がそっくりなことによる。

 2点目の如来立像も、顔の表情の雰囲気が、飛鳥仏に通ずる。6世紀の中国仏の影響が、もろに日本に伝わっているということだろう。

 青州龍興寺の仏像は全部で13体出品されている。インドのグプタ仏の影響を受けたものもあったりして、結構バラエティに富んでいる。

 さて、今回の展示物は全部で163点あって、新石器時代から唐五代までの優品が綺羅星の如く並んでいる。成都の三星堆や西安の兵馬俑など、過去の展覧会で見たものも数多いが、やはり一同に会して見られるのは有り難い。

 中国政府は、宋・元以降の文物は海外に出さない方針なので、現時点で望みうる最高の展覧会だろう。12月17日まで平成館で開催されている。

 なお、東京国立博物館本館でも、国宝平治物語絵巻ほか、普段見られない秋の特別展示を実施中なので、合わせてどうぞ。

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