土器の造形展

 平成13年2月10日、東京国立博物館の特別展と記念講演会を覗いて参りました。

 松浦考古課長の講演は、世界最古の土器である縄文土器から、紀元前後の弥生式土器に至るまでの概観解説で、大変分かりやすかった。世界にはない日本独特の特徴を持つ縄目の文様は、ねじりひもを回転させて付けたものである。だが、それが判明するまでに50年の年月を要した、ということは初耳だった。

 矢部工芸課長の講演は、縄文の「無窮動」、弥生の「多様の統一」という2つがキーワードだった。火炎土器に象徴される、縄文のやんちゃ坊主のような造形は、約1万年続いた。しかし、それは、支配者を頂点に置くヒエラルキーが形成された政治社会の出現と歩調を合わせ、弥生の調和と統一の美に変遷していった。そして、その精神世界の根底は、21世紀の現代アートまでつながっているのである。

 さて、展覧会は、いつもと違ってのんびりと回ることができた。2つの国宝と数十の重要文化財を含め、300点もの縄文&弥生式土器が一同に会した。もちろん、これは、初めてのことである。

 入場すると、いきなり新潟県十日町市笹山遺跡出土の国宝火炎土器が迎えてくれる。お馴染みの造形、これぞ、縄文のエネルギー。草創、早、前、中、後、晩の6期に分けられる縄文時代の中でも、最も創作が活発だった中期の傑作である。

 もう一つの国宝は、「縄文ビーナス」である。たしか、20年近く前に、茅野の尖石遺跡で見て以来の御対面である。ふくよかな女体は、当時の記憶のままであった。

 とても、全ての土器は紹介できないが、あと一つ挙げるとすれば、山梨県櫛形町鋳物師屋遺跡出土の人形装飾付き土器であろう。縄文中期においても、特に自由奔放で有名な勝坂式土器の一つで、重要文化財に指定されている。宇宙人に遭遇できる、ということで、これ以上の説明は止めておきましょう。是非現地で御覧になって下さい。

 本展は、3月11日まで開催中です。

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