5.4精神病院に入れられる

 抗うつ薬が効かず、鬱病の回復は、おもわしくない状況が続いていた。そんな折、担当の産業医が、若い医師に変わった。彼は、私に、次のような提案をした。

「ここで一度職場から離れ、1ヶ月ほど病院に入院したらいかがでしょうか。環境が変わることで、好転することもありますよ。」

 私は、それに乗っかり、紹介された埼玉の病院に入院した。

 実は、その時の記憶がほとんどない。脳は、嫌なことは忘れる習性があるからだろう。覚えているのは、窓という窓に鉄格子がはまっていたこと、夜中にあちこちで呻き声や叫び声が聞こえたことぐらいだ。

 そこは、いわゆる精神病院だった。ここは、自分のいるべき場所ではないと思い、2日後に産業医に病院から出してもらうよう電話した。

 産業医は、「もう少し様子を見ましょう。」と渋ったが、私は、「一刻も耐えられない。」と訴え、3日目の朝、退院することになった。

 だいぶ後になって気付いた。産業医は、病院からバックマージンをもらっていたのではないか?

 その病院も、今はない。どんな病院だったのかも、確かめようがない。

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