6.生い立ち
6.1誕生
−名前を間違えて戸籍に登録される
たしか50歳の頃のことだったと思う。区役所だったか銀行だったか忘れたが、提出した書類上の名前が誤っていると指摘されたことがあった。
私の名前には「己」の字が入っているのだが、「已」が正しいのではないかと言われた。
「己」・「巳」・「已」は、本来別字である。それぞれの読みは、以下の通りである。
・己:キ・おのれ・つちのと・コ
・巳:み・シ
・已:イ・すでに・やむ・のみ
私は、すぐに戸籍抄本を取り寄せ、確認した。そこには、3画目が少しはみ出た「已」の字が記されていた。
そのことを母に伝えると、目を丸くして驚いた。
「そんなバカな。それは大変だ。」
どうも、父が、曖昧な字を書いて提出したため、間違った字が戸籍に登録されてしまったようだ。
私は、半世紀の間、「己」だと思って生きてきた。生まれた時から、私の人生にはケチが付いていたということか。
女房は、家の登記簿やら銀行口座の名義やら、相続時の心配をしている。現金なものだ。
法的にどうなのかは知らないが、私は、もうどうでもよいと思っている。間違った名前でも、特に問題なく今日まで来られたので、これからも、それで通すつもりである。
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