6.2最初の記憶

 −授業をサボり噴水の10円を拾う(小学3年)

 小学3年生の7月のことである。新校舎に移転してまもなくの出来事だったので、よく覚えている。最も古い記憶だと思う。それ以前については、あまり写真なども撮ってもらっていないので、はっきりと覚えていることはない。

 さて、学校の休み時間に、一人のクラスメイトが、校庭の噴水の中に10円玉が一枚沈んでいるのを見つけた。手を伸ばしても届かない。私ともう一人が加わり、3人で石を投げたりして、何とか10円玉を取ろうと画策した。

 そのうちに、休み時間も終わり、一人は教室に戻っていった。だが、発見者と私は、そのまま噴水に残り、裏山に落ちてる枝を拾いに行ったりして、チャレンジを続けた。

 結局10円玉は取れなかったのだが、その時の私にとっては、授業よりもお金の方が大事だったということだ。2人の不在に気付かなかった教師もどうかとは思うが、その後、母が学校に呼び出されることになった。以下は、担任が母に投げた言葉である。私は、その後、何度も聞かされている。

「息子さんのような生徒は初めてです。将来がとても心配です。」

 次の日から、私は、学校から帰ると、すぐに机の前に座らされた。机といっても、みかん箱をひっくり返しただけのものであったが。その上に、国語や算数の参考書やドリルが積まれ、解くように強制された。友だちが遊びの誘いに来ても追い返された。

 私は、苦痛で仕方がなかった。とにかく、勉強ができなかったのである。といって、母が教えてくれることはなかった。母は、高校は出ているのだが、それは、横浜市で最低の偏差値の女子高だった。なので、日頃、母は学校のことは話したがらなかった。

 そんなわけで、私の成績が上がることはなく、3年生も終わろうとしていた。

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