あれ、と思った読者も多いであろう。
女王が支配する境界の尽きる所であるといった、邪馬台国の周辺国21ヶ国の最後に奴国がまた出てくるのである。これは、魏志倭人伝のはじめに出てきた福岡平野の奴国とは別の国で、たまたま国名が同じだったのであろうか。
奈良時代以降でも、日本の国名で、同じ音の例はある。例えば、阿波国(現在の徳島県)と安房国(現在の千葉県南部)である。
21ヶ国の最後に出てきた奴国も、これと同じ例だったのであろうか。
そうではなく、同一の国だったという考え方もある。狗邪韓國も使訳の通じる三十国の一つと考えると、狗奴国も入れて31になり、一つ多い。そこで、奴国が重複していて、差し引き30になるという計算である。
2つの奴国が同一国であるという論拠は、21ヶ国が環状に配置されていて、順番に隣り合った国々を並べていくと、また一周して元に戻るというものだ。
しかし、この考えはどうであろう。2度目の奴国は、女王が支配する境界の尽きる所であると言っている。福岡平野の奴国は、西北に伊都国、東に不弥国があって、境界の国とは言えない。やはり、同名の別国と見るべきではないだろうか。
ということは、必然的に狗邪韓國は、三十国には入らないことになる。
ところで、邪馬台国の周辺国である21カ国はどこに比定されるのか、また、狗奴国とはどこなのか、大いに興味のあるところであるが、それは後々の楽しみに取っておくことにしよう。